実際にポール・ディキンソンCEOは「走る距離を伸ばすことも、パワーを突き詰めることも、その両方の折り合いを付けることも思いのまま」と語っています。

こうした柔軟性を実現するため、RMLは既製品を流用せずゼロからセルと冷却系を設計し直しました。

もともと同社はル・マン用ハイブリッド車や中国・NIOの電動スーパーカーEP9の電池開発で鍛えられており、モータースポーツ級の放熱や高電流制御のノウハウをそのまま持ち込めたのです。

さらに、この技術は“名車の延命措置”にも使われます。

ラフェラーリやマクラーレンP1といった往年のハイブリッド超車に載せ替えられるレトロフィットキットが計画されており、RMLの取締役マイケル・マロックは「クルマ側が耐えられれば、従来の最大8倍ものパワーを引き出せる」と胸を張ります。

ただし電源はメガワット

ただし電源はメガワット
ただし電源はメガワット / Credit:Canva

夢のような「18秒チャージ」ですが、現時点でそれを日常的に利用するには、充電インフラの大きな壁があります。

例えば100 kWh級のバッテリーを18秒で満充電するには、理論上20 MW(=2000万ワット)もの電力が必要になります。

(計算式:100 kWh÷0.005時間(18秒)=20 MW)

これは通常の急速充電スタンド(数百kW程度)をはるかに超える規模で、変電所並みの電力供給設備が必要になるレベルです。

そのため、現状ではVarEVoltの性能をフル活用するには、レーシングサーキットのピットや富裕層向けの専用施設など、特殊な環境での利用に限られています。

一方で、急速充電器の高出力化は着実に進んでいます。例えば中国のBYD社は、最大1MW(1000kW)の超急速充電ステーションの整備を進めていると報じられており、将来的にインフラ側が進歩すれば、18秒チャージも一般的な充電手段に近づく可能性があります。