しかし今後は、体外離脱体験そのものを否定的に捉えるのではなく、その背景にあるストレスやトラウマに目を向けたケアが重要になるでしょう。

Weiler博士もまた、体外離脱体験を巡る偏見(スティグマ)を減らし、体験者が支援を受けやすくなるよう社会的な理解を促す必要性を訴えています。

体外離脱体験についてオープンに語れる空気が生まれれば、体験者どうしがお互いを支え合いながら心の回復力(レジリエンス)を高めていくことも期待できます。

研究チームは、本研究の結果を踏まえて、今後さらに追試や質的研究を行い、体外離脱体験の多様な側面を明らかにしていく必要性を強調しています。

体外離脱体験は決して珍奇な現象や狂気の兆候ではなく、人間の心が極限状態で編み出すひとつのサバイバル戦略なのかもしれません。

この新たな視点が、多くの人々にとって体外離脱体験の謎に光を当て、偏見なく語り合えるきっかけになることが期待されます。

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元論文

Are out-of-body experiences indicative of an underlying psychopathology?
https://doi.org/10.1016/j.paid.2025.113292

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部