さらに多くの体験者が、「死の恐怖が薄れた」「心の平穏が増した」といった前向きな変化を口にしています。
つまり、体外離脱体験にはポジティブな側面もあり、必ずしも本人に害を及ぼす経験ではないのです。
とはいえ、医学的には「体外離脱体験=病的」という偏見やスティグマ(烙印)が根強く、本人も周囲もそれを語りたがらない傾向がありました。
実際、「体外離脱を体験するのは自分がおかしい証拠だ」と思い込み、周囲に知られることを恐れて隠してしまう人も多いといいます。
米バージニア大学医学部のMarina Weiler博士(神経科学者)も「残念ながら、多くの精神保健の専門家も同じように捉えています」と指摘しています。
Weiler博士ら研究チームは、こうした状況を踏まえ、「果たしてOBEは本当に病の兆候なのか?」という疑問を検証することにしました。
研究の狙いは体外離脱体験者の精神的な健康状態を客観的に評価し、一般の非体験者と比べて遜色ないかどうかを確かめることでした。
もし体外離脱体験者のメンタルヘルスが非体験者と大差ないと示されれば、「体外離脱体験=病理」という単純な図式に疑問を投げかけることになるでしょう。
“病理ラベル”を剥がす瞬間

体外離脱は本当に精神的な「病気」なのか?
答えを得るため研究チームは18歳以上の計545名(体外離脱体験者256名+非体験者289名)を対象にオンライン調査を行いました。
まず「あなたはこれまでに体外離脱体験をしたことがありますか?」という質問でグループ分けし、全員にこれまでの精神疾患の診断歴や治療歴、さらには子ども時代のトラウマ体験などについて詳細に回答してもらいました。
また体外離脱体験者には初めて体外離脱を経験した年齢やその頻度、状況(睡眠中、薬物影響下、瞑想中など)についても尋ねています。