換言すれば、もし新しい力がいても私たちの日常では感じ取れないほど微弱だということが、よりはっきりしたわけです。
一方で、核分極効果のような標準模型内の現象がこれほど目立つかもしれないという点も、十分に大きな発見と言えます。
今回のカルシウム実験は、未知の力を探る地図に新しい方位線を引いた重要な一歩です。
今後は核分極効果をもっと精密に計算する研究や、別の元素・別の遷移を使った追試が計画されています。
測定精度がさらに上がり、既知の効果をきれいに差し引けるようになれば、残るズレが本当に“第5の力”によるものか、それとも原子核内部の意外な動きかが判明するでしょう。
今回とらえたわずかな「しなり」が、新しい自然法則への扉なのか――その鍵を手にする日を、多くの科学者が待ち望んでいます。
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元論文
Nonlinear Calcium King Plot Constrains New Bosons and Nuclear Properties
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.134.233002
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部