これはすなわち、知的好奇心の3本柱とも言うべき領域(人間・自然・抽象)は、環境が変われど常に人々を引き付ける普遍的な魅力を備えていることを示唆しています。

研究者たちは、こうしたパターンの一貫性は単なる偶然ではあり得ず、人間の好奇心には共通の基盤(アーキテクチャ)が存在する可能性が高いと指摘します。

まるで人類共通の「知の設計図」があるかのように、好奇心の向かう先には骨格のような枠組みが潜んでいるのかもしれません。

もちろん、この研究にはいくつか留意すべき点もあります。

扱った歴史データは完全ではなく、地域によって記録の量に偏りがあることは否めません。

また歴史上、記録に残った女性学者の数は極めて少なく(本研究のデータベースでも男性13,000人超に対し女性は144人のみ)、サンプルは必ずしも多様性を十分反映していません。

さらに「数学者」や「神学者」といった学問分野のカテゴリ自体が時代や文化によって意味合いが異なる可能性もあります。

しかし、そうした制約を踏まえてなお、今回明らかになった全体傾向の一貫性は注目に値すると研究者らは述べています。

偏りのある不完全な記録であっても、特定の興味の組み合わせが複数の世紀や大陸にまたがって繰り返し現れるという事実は、人類の好奇心の在り方に何らかの普遍的構造が存在する証拠だと考えられるからです。

今回の研究成果は、「人類の知的好奇心は骨格のような構造を持ち、時代や文化を超えて共通している」ことを大規模データで裏づけた事例としては、最も包括的な研究の一つと言えます。

研究チームは、今後さらなる研究によってこの仮説を深掘りしたいとしています。

例えば歴史的な文献本文をデジタル化して解析することで、当時の学者たちが具体的にどんな問いに興味を抱いていたかを詳しく調べることや、これまで見落とされがちだった女性・非欧州圏の知的貢献を記録し直すことなどが挙げられています。