また欧州のみ、非欧州のみのネットワークも別々に作成し、各地域間でネットワーク構造がどれほど似ているかを統計指標(WeightedJaccard類似度)で比較しました。
こうした精緻な分析の結果、どの地域においても学者たちの興味関心の組み合わせパターンは驚くほど共通していることがわかりました。
ヨーロッパであれ中東や東アジアであれ、特定の関心領域どうしがしばしばセットで現れるのです。
例えば「哲学」と「数学」は歴史上たびたび対になって登場しますが、その傾向はパスカルやコペルニクスといった西洋の学者だけでなく、イスラム世界のアル=フワーリズミーや中国の徐岳(じょがく、XuYue)のような人物にも見られました。
同様に「天文学」と「数学」、「神学」と「歴史」といった組み合わせも文化圏を越えて繰り返し観察されました。
研究チームが興味の対象分野をネットワーク上でグループ分けしていくと、最終的に3つの大きな領域が浮かび上がったといいます。
第一は「人間」に関する領域で、哲学・神学・歴史学など人間や社会、倫理にまつわる分野です。
第二は「自然」に関する領域で、動物学・植物学・地理学など自然界を観察・分類する分野が含まれます。
第三は「抽象的な事柄」に関する領域で、数学・天文学・音楽理論といった数理的・形而上学的な分野です。
調査対象の学者のほとんどがこれら3つの領域の1つ以上に属しており、そして各学者がどの領域に属するかという分布は世界のどの地域でも驚くほど似通っていたのです。
実際、各地域で3領域の比率は3割前後に収まり、大きく偏ることはありませんでした。
例えば近世ヨーロッパでは自然科学への関心がやや高めでしたが、それでも3領域の比率は概ね均衡が取れていたのです。
中世からルネサンス期に至る各時代を通じて、3領域それぞれに属する学者の割合に顕著な長期的傾向は見られず、どの時代にも3つの領域すべてに関心を寄せる人々が一定数存在したのです。