実際、当時は「○○学者」といった肩書きを複数持つ博学の士も珍しくなく、現代のような制度的・専門的な枠組みによる制約が少なく、より自由に複数の分野を探究できました。
研究チームはこうした歴史上の学者たちの職業や専門分野の記録に着目し、人間の知的好奇心に潜む大きなパターンを見いだそうとしました。
「私たちは科学の歴史的発展に興味を持ちました」と本研究の著者の一人であるユゴー・メルシエ氏は語っています。
現代とは異なる環境下にいた昔の学者たちを調べることで、純粋な知的好奇心がどのように現れるのかを探ることがこの研究の狙いでした。
人・自然・抽象で世界は動く

研究チームはまず、歴史上の学者たちの興味・関心分野同士のつながりを分析しました。
13,556人の学者のうち、複数の専門分野にまたがって活躍した「ポリマス(博学者)」とみなせる人物は2,317人に上りました(約2,300人)。
これら博学の学者たちは同時に複数の領域で功績を残しているため、彼らの組み合わせを分析することで一人の学者の中でどの興味と興味が共存しやすいかを把握できます。
研究者たちは各学者の専門分野(例えば「数学者」「哲学者」「地理学者」など)をノード(節点)とし、一人の人物が持つ複数の専門の組み合わせに基づいてノード同士を結ぶネットワークを構築しました。
こうして得られた「学問的興味ネットワーク」を解析することで、どの分野の組み合わせが歴史的によく見られるかが浮かび上がってきたのです。
さらに分析では、地域偏重による誤差を減らす工夫も行われました。
歴史記録は欧州の学者について豊富な一方、その他の地域の記録は少なめです。
そこでヨーロッパ以外の全地域の学者データに対し、欧州の学者データを同数だけ無作為抽出して加えることで、世界全体を均等に反映した「グローバル版ネットワーク」を構築しました。