日産スタジアムでは、Jリーグの基準を満たす高品質なピッチを保つため、ハイブリッド芝(天然芝と人工芝の混合)を採用。具体的には、夏芝(ティフトン419)をベースに、秋から春にかけて冬芝(ペレニアルライグラス)をオーバーシードする方式を採られている。

この方式は、気温や湿度に応じて芝生の状態を最適化するもので、夏芝が抜ける冬季でも緑を保つことができる。しかし、夏から秋にかけての「トランジション」期間(冬芝から夏芝への切り替え期間)は、芝生が特にデリケートな状態となる。

地温自動制御システム(フィールドアンダーヒーティング)を導入し、芝生の生育を促進しているだけではなく、新横浜公園内で芝生を育て、傷んだ場所を張り替える準備も万端な同スタジアムだが、この時期に大規模なイベントが開催されると、芝生へのダメージは大きい。

今年で言えば、既にOfficial髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム/5月31日、6月1日)とSnow Man(スノーマン/6月8日)の公演があり、この後もONE OK ROCK(ワンオクロック/8月30日、8月31日)の公演が控えている。

芝生の養生については、日産スタジアムをはじめとする新横浜公園スタッフブログ『芝生観察日記』に詳しく記されており、その苦労ぶりが痛いほど良く分かる。特に梅雨時は日照不足により、芝生の回復が遅れる。芝生保護のために「テラプラス」というパレット型の保護シートを敷くのだが、連続するイベント、さらに雨天で音楽ライブが行われれば芝生の保護は困難を極める。


2022年の芝ダメージとサッカーファンの主張

2022年、6月の梅雨による日照不足や気温の低下が、芝生の回復を阻んだ。さらに、7月の関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)のライブ開催直前の雨が芝生を弱らせ、ライブ後はまるで田んぼのようになってしまった。天候ばかりは人間がコントロールできない要素であり、ライブ開催のタイミングが芝生の状態に与える影響を増幅させる。