ペトロシーノ氏らの報告書は、こうした衝撃的な結論を通じて、「見た目の効果」ではなく「実際の成果」を重視すべきであるという科学的態度の重要性を強調しています。
このように、直感的に正しそうに見える手法が、実際には深刻な悪影響をもたらす可能性があるという事実は、教育・医療・福祉といった他の領域にも深く関係する問題です。
私たちは、感情的な納得ではなく、冷静な証拠によって物事の是非を判断する視点を持つ必要があるのです。
まとめ:思い込みを乗り越える力としての「科学」
『Scared Straight!』は、少年たちを更生させようという善意から始まったプログラムでした。
しかし、善意や正義感があっても、その方法が本当に効果的かどうかは、冷静な検証によって確かめる必要があります。
私たちの日常にも、「直感では効果的に思えるけど、実は逆効果かもしれない」ことがたくさんあります。
たとえば、子どもを叱るとき、感情に任せて怒鳴るのではなく、冷静に何が問題だったのかを対話するほうが長期的には効果的だとする研究もあります。
大切なのは、「自分が正しいと思ったこと」に固執せず、時には立ち止まり、他の視点やデータに耳を傾けることです。
それこそが、思い込みや偏見を乗り越え、よりよい社会をつくるための第一歩なのです。
そしてそのためにこそ、科学の力があるのです。
全ての画像を見る
元論文
“Scared Straight” and other juvenile awareness programs for preventing juvenile delinquency
https://doi.org/10.1002/14651858.cd002796.pub2
ライター
相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。
編集者
ナゾロジー 編集部