しかし、刑務所の中に一歩足を踏み入れた瞬間、彼らの態度は一変します。

迎えた刑務官は、笑顔ひとつ見せず、鋭い視線で少年たちをにらみつけながら鉄扉を閉め、その「ガチャン」という音が空気を一気に緊張させました。

案内役の刑務官は受刑者と同じような態度で少年たちと接し、番組内では一人の少年が足を止めると、「Keep moving!(動け!)」と強い口調で叱責する場面もありました。

その一言で少年はびくりとし、肩を震わせながら歩き出しました。

続く廊下では、受刑者たちが檻の中から叫び声を上げ、少年たちに向かって罵声を浴びせ、彼らの名前や外見をからかう場面が続きます。

カメラには、口を真一文字に結び、明らかに顔面蒼白となった少年たちの表情が映し出されており、入場前の軽口や虚勢が完全に消え失せていることがわかります。

この番組は、1979年の第51回アカデミー賞で最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞し、社会的にも大きな反響を呼びました。

刑務所での過酷な現実を見せつけ、子どもたちをビビらせることで、非行に走った少年たちの再犯を予防する。

確かに「直感的には効果的」と感じさせる内容です。

そのため『Scared Straight!』放映後、アメリカ各地で同様のプログラムは次々に導入されていき、一般の学校でもこの刑務所見学が実行されました。

しかし、この直感は、後に科学の前で大きく崩れ去ることになります。

科学的検証が示したのは、まったくの逆効果

2003年、アメリカの研究者アンソニー・ペトロシーノ(Anthony Petrosino)氏を中心としたチームは、「Scared Straight!」を含む複数の少年犯罪抑止プログラムに対して、科学的な検証を行いました。

この研究は、犯罪政策の効果を評価する国際的な団体「キャンベル共同計画(Campbell Collaboration)」によって発表されたもので、9件のランダム化比較試験(RCT)を対象にしたメタ分析です。