この手法では、プログラムに参加した少年たちと、参加していない少年たちを無作為に分け、それぞれのその後の再犯率を比較しています。
その結果は、非常に明確でした。
Scared Straight!に参加した少年は、参加していない少年よりも再犯率が平均で1.7倍に増加していたのです。
これは、予防策どころか、むしろ害を及ぼしていたことを示しています。

なぜこのような逆効果が生まれてしまったのでしょうか?
Campbellの報告によると、まず非行歴のある少年たちにとって、刑務所という極端な環境に入ることは、単に恐怖を与えるだけではなく、受刑者の態度や言葉づかい、社会的立ち位置に対する「接近効果」を生み出す可能性があるとされます。
つまり、暴力的で支配的なふるまいが「本物の男らしさ」や「タフさ」の象徴として受け取られ、少年たちが憧れや尊敬の念を抱いてしまうことがあるのです。
また、その体験を仲間内で「武勇伝」として語ることによって、社会的な承認や注目を得るという報酬構造が生まれ、それがかえって非行行動を強化する結果にもつながります。
一方で、このプログラムが広がる過程で、非行歴のない一般の中高生を対象にしたバージョンも数多く実施されるようになりました。
この層においては、刑務所での体験が逆に強いショックとなり、一部の子どもには不安障害やトラウマ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神的影響を与える事例も報告されています。
実際、キャンベルのレビューでは、Scared Straight!の実施には「潜在的な有害性」があると指摘されていて、プログラムの実施には慎重な対応が求められるとされています。
このように、Scared Straight!は、直感的には「うまくいきそう」な優れたプログラムに見えましたが、実際は非行少年に対しては行動強化を促し、一般の子どもには心理的負荷を与えるという、有害な効果の方が大きかったのです。