5月末、連邦ネットワーク庁が無料のアプリを開設し、それを使って国民にモバイルインターネットの受信情報を提供してもらい、一体、どの程度、電波網に穴ボコが開いているのか、実態調査をした。というのも、当局の認識ではデジタル環境はすこぶる良いはずなのに、なぜか利用者からの苦情が絶えないからだ。
その結果が6月6日に発表されたが、G2のみの場所、あるいは全くインターネットが使えない場所は全体の2%ほどだったが、それ以外に、非常に繋がりにくいという場所が14%もあることがわかった。これらの改善が必至だ。
なお、産業の発展に不可欠といわれる5G網の整備に関しては、中国のファーウェイのセキュリティ問題が未解決のまま。EUの多くの国は情報漏れを嫌ってファーウェイを締め出しているが、ドイツは、ファーウェイ抜きでは5G通信網を構築できないということで、禁止はできない。いずれにせよ、デジタル環境の悪さは、スタートアップ誘致の足を引っ張る大きな原因の一つだ。
ドイツ化する日本、他人事ではない未来
そうする間に、5月21日には、今年のドイツの経済成長が+0.4%から0%に下方修正された。過去2年はマイナス成長なので、実際には3年連続の縮小が危惧される。
これらを5月に発足したばかりの新政府がどこまで挽回できるか、産業界の期待は大きいが、肝心のメルツ首相は自らを外交の達人と思っているようで、世界のあちこちを嬉々として飛び回っている。そんなわけで、ウクライナの救済には熱心でも、国内企業の救済はなかなか進まない。
なお、将来はAIの開発、利用も急激に進めなくてはならず、そのためには膨大な電気が必要になる。それなのにメルツ氏は直近のウクライナのゼレンスキー大統領との会談で、たとえ戦争が終わってもロシアとドイツの海底ガスパイプライン「ノルトストリーム」の修繕はしないと約束したらしい。ドイツはすでに原発もないし、石炭火力も段階的停止の途上なので、どうやって安価で安定した電力を得るつもりなのか。米国のガスはロシアガスより格段高い。