中でも日本人旅行者がとりわけ驚くのが、デジタル化の遅れ。外の市場のスタンドでクレジットカードを使おうとした友人を、「ダメに決まってるでしょ」と制したら、「パリやバルセロナでは屋台でも使えた」と言うので、こちらの方が驚いた。日本では使えるのだろうか?

なお、今回分かったのだが、ドイツではクレジットカードは、ホテルやレストランでもVISA以外はほぼ不可だった。タクシーはOKという建前だが、少し田舎に行くとモバイル回線が遅すぎて、携帯電話もインターネットも接続不良になる地域が多いのが現実。ドイツ人はそれをよく承知なので、カードだけに頼れるなどとは思っていない。いずれにせよ、ドイツは技術大国と信じる日本人は、皆、とても驚く。

デジタル後進国の実態と足かせ

前ショルツ政権はそれまでのメルケル政権を批判し、“ギガバイト作戦”を開始した。2025年の終わりまでに全所帯の50%、30年までには100%に光ファイバーなどブロードバンドを接続するとしたが、結局はあまり進まなかった。現在、ドイツはインターネットの平均速度の世界ランキングで55位という悲惨さだ。

5月29日の公営放送ARDによれば、例えばヘッセン州で、昨年夏に高速インターネットに接続されていた所帯は、全体の27%(同州デジタル庁の発表)。ヘッセン州というのは、世界の重要な金融機関の集中するフランクフルトのある州だから、デジタル環境の完備している地域と、していない地域の差が激しいということだろう。

一方、一番進んでいるのはハンブルクで、全所帯の73%が高速。一番遅れているのがチューリンゲン州で16%のみ。つまり、州によっても格差が激しい。ちなみに現在、固定ブロードバンドの平均速度で世界首位を競っているのは、アラブ首長国連邦、シンガポール、香港など。

また、モバイル回線の方も、上位はアラブ首長国連邦、カタール、クウェートなど中東の国々が進んでおり、EUではブルガリア、デンマーク、オランダ、ノルウェーなども上位にいるが、ドイツはこちらも56位とのこと。ドイツのデジタル化が進まないのは、マスト1本を建てるだけでも必要となる膨大な書類や、煩雑で無意味な規則が大きな障害と言われる。これらは言うまでもなく、その他の様々な投資や開発の妨げにもなっている。