220ペタ電子ボルトの凄さとは?

220ペタ電子ボルトというエネルギーは、ジュールに直すとたった0.035 ジュールほどにすぎません。これは野球ボールを時速1 メートルではなく時速70センチほどでそっと転がしたときの運動エネルギーと同じくらいです。日常の感覚では「大したことがない」数字に見えますが、ここでエネルギーを背負っているのは重さが野球ボールの10²⁶分の1以下しかない陽子や原子核のような極小の粒子です。質量がほぼゼロに近い点粒子に0.035 ジュールを詰め込むとエネルギー密度は桁外れに高くなります。比較のために、人類最大の加速器LHCが陽子1個に与えられるエネルギーは6.5テラ電子ボルトしかありませんので、220ペタ電子ボルトはその3万倍以上に相当します。もしLHCが地上を走るジェットコースターだとすれば、この粒子は太陽‐冥王星間を一瞬で駆け抜けるコースターのようなもの――数字が小さく見えても、粒子一個に詰め込まれたエネルギーとしては想像を超える高密度であり、そんな粒子が自然の宇宙加速装置から飛んできたことこそが「前代未聞」と言われる理由なのです。

この粒子は大気中でミュー粒子(ミュオン)を生み出し、水中を通過する際のチェレンコフ光(青い閃光)によって検知されています。

検出された粒子は、KM3NeT検出器の約3分の1のセンサーが反応するほど強力なものでした。(2025年のarXiv追補論文より)

まさに「ありえない」ほどの高エネルギー粒子だったのです。

(※純粋なエネルギーではオーマイゴット粒子やアマテラス粒子のほうが強力ですがニュートリノとしては破格でした)

ところが、この超高エネルギー粒子の発生源には謎が残りました。

発表当初、観測チームは粒子を生んだ天体を特定しようと試みましたが、観測された粒子の方向には約 3° 以内に 18 個の候補が存在し、詳細な解析の結果 7 個が特に有力視されました。