日本のトップバッターは積水化学工業

 実は、中国では一足先にペロブスカイト太陽電池の量産化が進められている。しかし、中国で作られているのは主としてガラス基板タイプのもので、タンデム型(シリコン太陽電池と組み合わせたもの)に用いるのが主流。現状、世界でシリコン型を製造しているのは、ほとんどが中国メーカーだからだ。

 しかし、瀬川教授は「中国のペロブスカイト太陽電池は既存のシリコン型より重い」とエンジニアリングの点からも日本に大きな優位性があることを指摘する。

 ペロブスカイト太陽電池の課題は発電効率と耐久性だと言われてきた。しかし、積水化学は既に発電効率15%を達成し、屋外耐久性も10年相当を確認している。今年中に屋外耐久性20年相当を目標に掲げており、発電効率については2030年18%を目指している。

 実用化について同社は、共同実証研究を3月18日から開始したと発表した。1年の実証期間後に本格的に事業化され、生産ラインは2027年度に量産開始の予定だ。今現在、最大規模で設置されているのは、大阪関西万博のバスターミナルの屋根上である。

 パナソニックは2026年にも実用化の方針を明らかにしており、窓の中に埋め込むような建材と一体化したタイプを試験販売する予定。アイシンは3月31日、愛知県安城市の本社工場で社内実証を開始した。区分とすれば、パナソニックもアイシンもガラス型だが、アイシンは薄ガラスを用いた独自のフィルム構造による高い耐久性を特徴としていて、見た目や重さはフィルム型と間違えそうなほどである。

 日本メーカーによる国内での製品化と量産化は2年以内ということになるが、気になるのは発売価格だ。

「太陽電池の価格はパネルだけで決まるものではない。既存の太陽電池は一般的には電気店で購入するが、それを屋根に据え付けるには2~3人必要。場合によってはクレーンも使う。実は施工費とパネル代でどちらが高いかと言えば、施工費の方がよほど高い。その点、ペロブスカイト型は軽いので、1人で簡単に施工できる。なので、kWh(キロワットアワー)コストで考えるべき」(瀬川教授)

 現在、太陽電池パネルの屋根への施工費は、新築住宅の場合は1kWあたり約26~28万円、既存住宅の場合は約28~30万円が相場だ。よって、一般的な4〜5kWのシステムで150〜200万円程度になってしまう。自治体からかなりの補助金があるので100万円以下にはなるが、やはり高額だ。

 フィルム状のペロブスカイト型で施工費がどの程度になるのか、今後が楽しみだ。