日本の強みと課題

――日本のスタートアップは、どの業界や分野で特に強みを発揮できそうですか。

Whiplusさん  個人的には2つあると思っていて、1つはコンテンツ産業。世界のどこに行っても、やはり日本アニメのグッズなどを販売している場所があります。日本文化に関するもの、例えば伝統工芸品なども高く売っていますね。ポケモンもスーパーマリオも世界中の人々の共通言語になっていますし、ソフトパワーは日本にとって最強の武器だと思います。それをいかに伸ばして拡大してマネタイズしていくかというのが、日本にとって大きなチャンスです。

 2つ目は製造業です。単に先進的な製造技術にとどまらず、細部にまでこだわった高品質な製品を通じて、人々の暮らしそのものを豊かにするライフスタイルの提案ができる点が特徴です。

 今年のIVSのオープニングセッションは、メモアプリ「Notion」の創業者と京都市長の対談コンテンツなのですが、IVS Globalチームで企画しました。実はNotionは京都で創意されたものです。アメリカのソフトウェアでありながら非常にシンプルで、まさに「侘び寂び」を感じさせるデザインです。シンプルでありながらも多機能で、あらゆるニーズに対応できます。創業者の2人は2年間、京都で最初のコードを書き始め、プロダクトの基礎を京都で作り上げました。その後、アメリカに持ち帰って事業を展開し、今では数億人のユーザーを獲得するに至ったそうです。

 コンテンツという表層のところと哲学というコアのところを外国人も理解して、しっかりプロダクトになるという1つの事例です。こういうモノづくりは日本のチャンスです。

――Whiplusさんは日本人の気づかないところに気づいていると感じます。

Whiplusさん  私は海外にも長く滞在しますが、日本に戻るたび安心感があるんです。空港も住む家もクオリティが高い。細かいところにこだわりがあり、ライフスタイルの質が素晴らしいです。世界には多くの富裕層がいますが、生活のクオリティに対する意識や価値観は、日本のそれとは異なる部分が多いと感じます。それは「侘び寂び」といった、生活に対する考え方の違いに起因するのかもしれません。

 整理整頓や断捨離といった考え方があれば、人間としての幸福度がさらに向上するのではないかと考えています。このような日本のライフスタイルを世界に広めていきたいですね。これから多くのスタートアップもそういう日本の生活の美学を世界中に展開してほしいです。