仮説2:バミューダ・トライアングルの牙?機械トラブルと過酷な自然
次に考えられるのは、ボートが機械的なトラブルに見舞われたか、バミューダ・トライアングルの過酷な気象条件に遭遇し、遭難したという可能性だ。この海域は、急激な嵐、強い海流(特にガルフストリーム)、そして突然の天候変化で知られている。特に事件が発生した冬季(12月~1月)は天候が不安定で、強風や高波が発生しやすい時期だった。
ボートから遭難信号や残骸が一切発見されなかったことは、エンジン故障や沈没、転覆といった突然の事故により、通信手段を失った可能性を示唆している。もしタークス・カイコスで発見されたボートがマコ・ボートと同一で、6ヶ月後に発見されたのであれば、長期間の漂流中に乗客が命を落とした可能性が高い。遺体が脱水や飢餓で死亡したと仮定すれば、ボートが無人の状態で長期間漂流していたことになる。
約8.8メートルという小型のボートは、外洋での長距離航行には不向きであり、エンジン故障や燃料切れが発生すれば、ガルフストリームに流され、タークス・カイコス方面へ漂流する可能性も否定できない。
過去のバミューダ・トライアングルでの失踪事件の中には、天候や航行ミスが原因とされるケースも多い。科学的には、この海域が特別に危険であるという証拠はないとされているが、環境要因を無視することはできないだろう。
しかし、沿岸警備隊による広範囲の捜索にもかかわらず、残骸や油の流出すら見つからなかった点は、単なる機械的トラブルだけでは説明がつきにくい。また、タークス・カイコスまでの漂流には、数百マイルの距離と複雑な海流を考慮する必要があり、ボートが無傷で漂着する可能性は低いという見方もある。
古くより語られてきたバミューダ・トライアングルの神秘性が、事件をよりミステリアスなものにしているのかもしれない。
仮説3:犯罪の影?麻薬密輸と隠蔽工作
マコ・ボートが麻薬密輸やその他の犯罪活動に関与しており、意図的に隠蔽されたのではないか、という仮説も存在する。乗客の身元やボートの詳細が一切公表されないのは、犯罪組織が関与している場合に見られる特徴の一つだ。麻薬密輸や密航は、当局の捜査を避けるため、情報が徹底的に隠蔽されることが多い。
バハマからフロリダへのルートは、麻薬密輸の主要な経路としても知られている。マコ・ボートが密輸に使用され、乗客が「荷物」として扱われていた可能性も考えられる。そして、何らかのトラブル(当局の追跡や内部の対立など)が発生し、ボートが放棄されたか、あるいは意図的に沈められたものの、結果的に漂流してしまったというシナリオだ。
もしタークス・カイコスで発見されたボートがマコ・ボートと同一であれば、犯罪組織が関与し、意図的に情報を隠している可能性はさらに高まる。ただし、犯罪組織が関与していた場合、通常はボートを完全に隠滅するのが一般的であり、漂流ボートが発見されたという事実は、計画性の低さを示している可能性もある。
タークス・カイコス警察の「犯罪の兆候なし」という声明も、証拠がなかったことを意味するのか、あるいは調査が不十分だったのか、様々な解釈が可能だ。
カリブ海は、麻薬密輸や人身売買の温床として知られており、当局は米国への麻薬流入を防ぐために努力を続けているが、犯罪組織の巧妙な手口は、こうした事件の真相解明をより一層複雑にしている。