仮説1:密航・人身売買の闇に消えた悲劇か?
マコ・ボートが密航や人身売買に関与しており、何らかの理由で乗客もろとも遺棄されたのではないか、という仮説だ。その根拠として、まず挙げられるのが乗船人数の異常な多さである。約8.8メートルのボートに20人もの人間が乗っていたというのは、通常のレクリエーション目的では考えにくい。専門家によれば、このサイズのボートの安全な乗船人数は通常6~8人程度であり、20人は明らかに過密で危険な状態だった。
さらに、乗客の名前や背景が一切公表されていない点も、この仮説を裏付ける。これは、密航や違法移民が関与する場合によく見られるパターンであり、バハマからフロリダへのルートは、ハイチやキューバなどからの密航ルートとして知られている。タークス・カイコスで発見された漂流ボートの乗客20人も身元不明で、ボートが「地元発着ではない」とされたことも、密航船が計画外の場所に漂着した可能性を示唆している。密輸業者がトラブルに巻き込まれ、乗客を放棄した場合に起こりうる状況だ。
もしタークス・カイコスで発見されたボートがマコ・ボートと同一であれば、6ヶ月間もの間漂流し、乗客は脱水症状や飢餓、あるいは厳しい自然環境の中で命を落としたと考えられる。カリブ海の海流は複雑で、ボートが数百マイルも離れた場所に流されることは十分にあり得る。
しかし、この仮説には反論もある。密航船がバミューダ・トライアングルというリスクの高い海域をわざわざ通るだろうか。密輸業者は通常、沿岸を避け、監視の少ないルートを選ぶはずだ。また、タークス・カイコスで発見されたボートが本当にマコ・ボートと同一なのかも不明であり、6ヶ月間の漂流という点も、ボートの燃料や構造、遺体の状態などを考慮すると、さらなる検証が必要となる。
この仮説がもし真実であれば、この事件は単なるミステリーではなく、カリブ海地域の深刻な社会問題を反映した悲劇として、より深い議論を呼ぶことになるかもしれない。
