日本全体でいえば、1995年が1.42で、2000年が1.36になったが、大都市の代表である政令指定都市と東京都区部でははるかに数値が下がっている。なかでも東京都区部と札幌市は著しく低い。そして今でもこの傾向は変わっていない。

表3 政令指定都市・東京都区部の合計特殊出生率 (出典)金子、2003:26.
大都市は「少子化」の社会的実験室なのである。タイトルを『都市の少子社会』としたのも、大都市の少子化現象が日本全体を10年以上先取りしていたから、大都市での少子化原因と対策を研究すれば、その結果は日本社会全体にもそのまま応用できると考えたからである。
本書では大都市を社会的実験室と見なして、そこでの傾向を把握して、原因を分析し、対策を考えて、社会的に提言するという姿勢を堅持した。
少子化の支援策
当時の政府による支援策は「少子化」全般ではなく、あくまでも「保育・育児」に特化した印象が強かった。表4で示したように、保育所の整備や児童手当や学童保育などには可能なかぎり予算措置が講じられていて、それは現在の6兆円規模に膨れ上がった年間予算でも変わっていない。

表4 保育・育児の支援策 (出典)金子、2003:20
しかし、2025年5月段階でも「年少人口数」(子どもの数)は44年連続減少を更新したし、その全人口に占める比率は11.1%にまで低下して、こちらは実に51年間連続して減少を記録した。
「子育て者支援」だけに偏重した40年間
その理由は、40年間の「少子化対策」の対象者が「子育て者支援」だけに偏重していて、「保育・育児支援」だけだったからである。
44年間の子ども数連続減少の背景に未婚率の増加があり、社会全体の「結婚からの逃走」(flight from marriage)が普遍化した事実への配慮が、政財界、マスコミ界、学界でも乏しかったことがあげられる。
婚外子率が2%台の日本では、結婚しなければ子どもが生まれない。日本では非婚が増えて、未婚率が上がれば、誕生する子どもが少なくなる。