少子化は社会変動なのだから、「少子化対策」とはその変動する社会にどのように立ち向かうか、あるいは適応するか、誕生する子ども人口を減らさないようにするには、何をどうするかという政策こそが最優先課題であった。

ところが40年間は「保育・育児支援」に特化した歴史であったことで、次世代次々世代からケアマネージャー、介護福祉士、ホームヘルパーなどが得られず、諸制度をうまく利用しての「おひとりさまの老後」も危うくなってきた。

家族機能の衰弱

しかし、国民に「家庭の役割」を尋ねると、当時でも複数回答ながら①家族の団らん、②休息、やすらぎの場、③家族の絆を強める場、④親子が共に成長する場、などが上位に集まっていた(図3)。

図3 家族の役割(複数回答) (出典)内閣府大臣官房広報室(2002) (注)金子、2003:92.

ただ不幸なことに、それから23年後では「家族団らん」「休息・やすらぎ」という家族に期待できる機能と無縁な未婚者=単身者、すなわち「結婚からの逃走」(flight from marriage)や「家族からの逃走」(flight from family)が増えた分だけ、そのような家族機能もまた社会全体としては衰弱しているように思われる注4)。

長寿医学からも「家族とのつながり」が重視される時代

また、長寿医学の観点からも、フォンタナが行った「世界でもっとも長寿な地域」としての沖縄、イタリアのサルディーニア島、カラブリア県およびチレント地域」研究結果として、「家族、友人および社会との密接なつながり」が第3の長寿要因としてあげられている(フォンタナ、2020=2022:11)。さらに第22章でも「社会的孤立および孤独と心臓発作による死亡リスクの増大」が詳述されている(同右:316)。

すなわち、「結婚からの逃走」や「家族からの逃走」により増大した未婚者=単身者のライフスタイルの選択は、「健康長寿学」の成果とは真逆であるというエビデンスとしてフォンタナの研究成果をここで紹介しておきたい。