「将来の社会を予測する場合,まず土台の人間が予想時点までの間にどのように量的,質的に変化するかを考え,予想時点での人口を土台としてどのような上部構造-私の考えでは経済も上部構造の一つである-が構築できるかを考えるべきである」(同上:12).「人口の量的,質的構成が決定されるならば,そのような人口でどのような経済を営み得るかを考えることが出来る.土台の質が悪ければ,経済の効率も悪く,日本が没落するであろうことは言うまでもない」(同上:14)。
「50年ごとの人口半減の法則」
表1は、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)がこの時期に発表したによる将来人口予想であるが、2050年に9000万人を割り込み、2100年に4500万人まで落ち込む「50年ごとの人口半減の法則」が窺える内容になっている。これは社人研が合計特殊出生率(TFR)を1.34と仮定して、男性の平均寿命が77.10歳、女性のそれが83.99歳とした予測値であった。

表1 国立社会保障・人口問題研究所による将来人口予想 (出典)金子、2003:11.
しかし周知のように、2023年のTFRは1.20であり、政府発表よる2024年のTFRは6月に1.15と発表された。
森嶋が危惧した以上のスピードで、日本社会が縮減を開始していることは自明であり、21世紀の中期にこの予言が外れることを願っているが、ここでは先に進もう。
「社会的ジレンマ」の理論も取り込んだ。
第二の「実証的で理論志向が強い研究」とは、社会的ジレンマ論の応用であった。
社会的ジレンマとは、「人々が個人的合理性を追求する結果、社会的には非合理的な状態に陥ってしまうメカニズム」(海野、2021:38)である。そこには合理的行動の捉え方から慣行と制度のかかわり方などの研究へと拡散するテーマがたくさんある。ウェーバーのいう「目的合理的行為」、「価値合理的行為」、「感情的行為」、「伝統的行為」に分けることも可能である(ウェーバー、1922=1972:39)。