特に硫黄を含むアミノ酸残基は隣同士で架橋し合う性質が知られており、時の試練に耐える強固な分子結合をうみだせます。
脳細胞は信号伝達の仕組みとして硫黄を含むアミノ酸が多数存在していることが知られており、他の軟組織よりも架橋が起こりやすくなっていると考えられます。

他にも神経組織を化学的に安定させる方法としては、鉄などの金属錯体を利用した無機物領域の形成や、鉄を使った架橋の仕組みが存在します。
発見された脳の中には酸化鉄によって覆われ、表面が赤オレンジ色になっているものも存在します。
研究者たちは、超長期にわたって保存されてきた脳を分子レベルで調べることができれば、生体組織を地質学的なスケールで存続させる仕組みがわかるだろうと述べています。
また保存されている脳は、生体分子の情報源としても有用です。
これまで鉄器時代の歯などからは100個のタンパク質が回収され、石器時代の指の骨からは15個のタンパク質が回収されました。
しかし保存された脳からは738個ものタンパク質が得られ、骨に比べて軟組織が大量の情報を持っていることが示されました。