通常生物の軟組織は、死後真っ先に分解され長期間残ることはありません。
中でも脳は非常に柔らかく脆い臓器のため、考古学的にもっとも残りにくい部分だと考える人は多いでしょう
ところが考古学において、脳は意外と保存されて残っていることが多い臓器と言われているのです。
そこで英国オックスフォード大学(University of Oxford)は、脳が発見されたという考古学の事例を調査。
結果、もっとも長く保存されていた脳は1万2000年前のものであり、さらにそれは乾燥状態や凍結状態ではなく、弾力のある「プルプルした状態」だったことがわかりました。
生物の軟組織が腐らないよう保存されるためには、乾燥状態や冷凍状態にするのが有効と考えられていますが、どうも脳の場合は違うようです。
今回の研究チームは、その理由についても解明しています。
いったいなぜ脳は弾力を保ったぷるぷるの状態で1万年以上も保存されることがあるのでしょうか?
研究内容の詳細は2024年3月20日に『Proceedings of the Royal Society B Biological Sciences』にて公開されました。
目次
- 考古学において脳の発見は珍しいのか?
- なぜプルプル状態の脳が一番長持ちするのか?
考古学において脳の発見は珍しいのか?

脳は死後に最初に分解される「最も脆い臓器」として知られています。
脳の脆弱さは法医学においても常識となっており、他の臓器が形を留めている段階でも、脳だけはいち早く液状化を起こしてしまうことが知られています。
そのため考古学の世界でも遺跡から原形を留めた脳がみつかることは奇跡的と考えられており、発見された場合は大ニュースとして取り扱われます。