さらにその中の「アカデメイアの歴史」と呼ばれている古文書には、プラトンが設立したアカデメイアについて書かれてあるだけでなく、プラトンの人生に関する記述が見られました。
しかしここまで分かっていても、肝心の部分は字が黒ずんでいるせいで読むことができていませんでした。
また非常に古びているため、下手に触ると貴重な古文書を傷つける恐れがあります。
そこで研究チームは最先端の科学技術を駆使して、古文書に触れることなく文字を解読することにしました。

チームが用いた手法の一つは「光干渉断層法(OCT)」という技術です。
これは光の反射を利用して対象物の内部を画像化する技術であり、医療現場では目の奥の画像を撮影するために使われています。
チームはこうした技術をフル活用して、人の目では見えない微かな手書きの痕跡を可視化し、読み取られた文字をデジタル上で復元。
その結果、現時点でピロデモスが書いた文章の30%にあたる約1000語を解読することに成功しました。

最も重大な発見はプラトンの正確な埋葬場所が書かれていたことでした。
それによると、プラトンはアカデメイアの中に設けられた「プラトン専用の個人庭園」の中に埋葬されたというのです。
研究者たちは彼がアカデメイアに埋葬されたことは予想していましたが、ここまでピンポイントに場所が特定されたことに驚きを隠せません。
アカデメイアはプラトンの死後も学頭を変えながら数百年も続きましたが、529年に東ローマ皇帝のユスティニアヌス1世による非キリスト教の学校を閉鎖する勅令によって歴史に幕を閉じています。