アメリカのバイデン大統領は、アメリカがウクライナのために戦う米軍を派遣しないことを明確にしてきたし、ヨーロッパのいかなる主要国もそのようなこと(部隊の派遣)を提案していない。どちらかといえば、アメリカは米軍人を撤退させ、外交官を退避させることにより、逆のメッセージを送ってきたのだ…アメリカの対外政策の主流派は、誰もウクライナのために実際の戦争を行おうと思っていない。これは実際には(ウクライナが西側の)本当の死活的利益ではないと暗黙に了解されているということだ。

第2に、ロシアはウクライナがNATOという敵対する強大な軍事同盟に組み込まれることを防ぐことに大きな利害を持っているだけでなく、そのためには武力行使も厭わないという固い決意を持っていました。この点についても、再度、ウォルト氏の分析を引用します。

これとは対照的に、ロシアはその中核的目的すなわちウクライナのNATO加盟を今だけでなく将来のいかなる時点でも実現させないために、武力行使も辞さないことを明言してきた。それは以前の2014年における意思表示が例証していた…2014年の時と同じように、ドンバス地方へのロシア軍の現在の進撃は、西側の視点からすれば、不法であり、非道徳であり、弁解の余地がない。しかし、にもかかわらず、それは起こったのだ…ここで何が私を当惑させているのか。決意すなわちロシアが死活的利益(つまり戦うに値する利益)とみなすものが、西側にとって死活的とはいえない(つまり戦うに値しない)だけでなく、直接に関係する軍事力において著しい不均衡が存在する…ウクライナはロシアのすぐ隣にいるので、その航空戦力や陸上戦力からの攻撃に脆弱なのだ。

第3に、主要な関係国の相対的なバーゲニング力が危機の結末を左右するならば、西側がロシアを動かせる見込みは低かったはずです。すなわち、バイデン大統領や西側の指導者が、プーチン大統領にウクライナのNATO非加盟を公式に約束するといった譲歩をすることなく、ロシアに侵攻を思いとどまらせられるだろうという判断は、戦略のロジックから予測できる結果に目を背けた、矛盾するものだったのです。