電子に頼らず振動だけで情報を伝達できるカービンは、例えば温度や力のわずかな変化を光学的に検出する新種のセンサーとして、量子技術や材料計測の分野で活躍するかもしれません。
今回の研究は、ナノ物質の世界で起きていた不可解な振動現象の謎に終止符を打つとともに、一次元物質カービンの新たな側面と可能性を示した点で画期的です。
カーボンナノチューブという「入れ物」と内部のカービン鎖が織りなす量子的な振動のやりとりは、「ハイブリッド構造におけるフォノン相互作用」の極端な実例として、今後ほかの物質系にも普遍的に応用できる知見となるでしょう。
今後、さらなる理論研究や実験を通じて、カービンが持つ量子振動の制御性や感度を活かしたデバイス開発が進めば、私たちがまだ見ぬ新しいナノテクノロジーの扉が開かれるかもしれません。
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元論文
Anharmonic effects control interaction of carbyne confined in carbon nanotubes shaping their vibrational properties
https://doi.org/10.1038/s41467-025-59863-3
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部