例えば、いくつかの緩和シナリオでは、地球温暖化は今後約50年でピークに達した後、緩やかに落ち着くとすると予測されています。

また世界人口も2080年頃から減少に転じる可能性が指摘されています。

もちろん2100年以降も何らかの脅威は続き、新たな問題が生じる可能性はあります。

しかし、現在観測されている絶滅率が今後何百年も一定だと仮定してしまうのは現実的ではないとしています。

7つ目は議論が地球上の生物多様性全体を反映していないという点です。

第6の大量絶滅に関する議論の多くは陸上脊椎動物(哺乳類・鳥類・両生類・爬虫類)に焦点が当てられています。

しかし脊椎動物は地球上の全動物種の約2.5%に過ぎません。

残りの大半を占める昆虫など無脊椎動物の動向は十分考慮されておらず、仮に将来75%もの種が失われるとすればその多くは昆虫など脊椎動物以外で起こるはずだと指摘されています。

実際、一部地域では昆虫の個体数減少(いわゆる「昆虫の黙示録」現象)が報告されていますが、それが最終的に何%の種の絶滅につながるかは依然不明です。

現在の議論は生物多様性のごく一部のデータに偏っており、地球全体の傾向を十分に反映していない可能性があります。

いたずらに「第6の大量絶滅」という単語を出すべきではない

研究チームは以上の点を踏まえ、「第6の大量絶滅が起きている」とする科学的根拠には疑問が残ると結論付けました。

その上で、安易にこの表現を用いることへ警鐘も鳴らしています。

著者らは「科学的根拠が不確かなまま『第6の大量絶滅』という表現を使い続けることは、保全生物学や科学全般の信頼性を損ねかねない」と述べています。

実際、現在のデータから推定される将来的な種の喪失率は約12〜40%程度と見込まれており、これは壊滅的な損失ではあるものの「75%以上」という大量絶滅の定義には遠く及びません。

(※たとえばIPCC 第6次報告書 WG2 (2022)によれば、温暖化が中程度のペース(+3℃)で進んだ場合は約12〜29%の生物が絶滅し、最悪のシナリオ(+4℃)で進んだ場合には最大で39%の生物が絶滅する可能性があるとされています。)