従来のシーケンス技術ではこうした領域を正確に読み解くことが難しく、解析から漏れて“空白”となっていました。
(※空白となった部分では実に数100 Mb規模が解析不能となっていました)
そのため、これまでのヒトとチンパンジーの比較研究は、主に解析しやすい部分(全ゲノムの大部分を占めるものの、構造が単純な領域)に限られており、ゲノムの「見えていない部分」にどれほど差があるかは不明のままだったのです。
今回の研究は、この「見えていない部分」まで含めてヒトと類人猿のゲノムを比較し直すことを目的として行われました。
米国ワシントン大学やペンシルベニア州立大学、国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)などからなる国際チームが、最新の長鎖DNAシーケンサーと高度な組み立てアルゴリズムを駆使することで、大型類人猿のゲノム解読に長年立ちはだかってきた技術的障壁を打ち破ったのです。
ペンシルベニア州立大学のカテリーナ・マコヴァ教授は「本研究は比較ゲノム研究における画期的成果であり、これまで未完成なゲノムしか扱えなかったためにできなかったゲノム進化の全貌を、初めて詳細に把握できるようになったものです。
今回得られた6種のゲノム配列は、今後のヒトと類人猿の進化研究の確固たる基盤となるでしょう」と述べています。
“99%同じ”はウソだった!ヒトとチンパンジーのDNAに15%のギャップ

研究チームは、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータン、そしてテナガザルの一種シアマンという6種の類人猿のゲノムを染色体の端から端(テロメアからテロメア)までほぼ完全に解読しました。
最新技術により長いDNA断片を一気に読み取り、それらを高精度に繋ぎ合わせていくことで、各染色体を連続した配列として再現することに成功したのです。