さらに仕事内容も魅力的で、億単位の案件や海外拠点などスケールの大きな仕事に携わることができる。
筆者は外資系企業に勤務していた際、米国本社からのシステム導入統合プロジェクトに参画し、巨費を投じる大規模な仕事を経験した。後にも先にもあれほどの規模のプロジェクトを経験することはなかった。 個人事業主やベンチャー企業ではできない経験ができれば、それはそのままキャリア資産になる。
多くの人が大企業に入りたがるのはこうした明確なメリットがあるからだ。
崩れ始めた大企業神話
だが「入社できれば一生安泰」という感覚の大企業神話も崩れ始めた。それは日本企業だけでなく、米国のリーディングカンパニーなども例外ではない。
2024年5月、グーグルは営業系部門だけで約200人を削減した。世界のテック業界では、同年の第1四半期だけで2万2000を超えるポジションが消えたという報道もある(データ引用元:Layoffs.fyi)。
国内に目を転じれば、住友ファーマが40歳以上700名規模の早期退職を募り、事業再編に踏み切った。
また、マッキンゼーの「Generative AI’s potential to boost productivity (2023年)」では、「2030年までに労働時間の最大30%が自動化される可能性がある」とされている。
日々、仕事に励んでいると忘れがちなのが「企業は株主のもの」という視点である。株主が主役であり、株価に影響する収益を守るためなら大企業でも…いや、むしろ株価を意識して経営をする大企業だからこそ人員削減は行われる。最近では我が国でも黒字リストラが報道されるようになった。
勤務先が安定して給与を支払っていることと、その企業が安定していることはイコールではない。「会社員は安定がメリット」という言葉は様々な解釈が可能だが、「勤務先が存続し、雇用を維持すれば」という大前提がある。この前提が揺らぐことになれば、会社員でも安定の保証はどこにもない。