黒坂岳央です。
「大企業に入れさえすれば勝ち組」という感覚を持っている人は未だに少なくない。だがそんな昭和時代の感覚は実態とはそぐわず、音もなく瓦解している。むしろ、個人的には「大企業に長く身を置くことで、元々のサバイバル能力を削ぐ可能性すらある」と思っている。
本稿は単に危機を煽りたいわけでも、大企業勤務の人を下に見る意図もない。自分自身が家族経営企業から東証一部上場企業まで幅広く、複数社で働いてきた経験がある。この記事では「大企業から正しい価値の引き出し方、誤った感覚の手放し方」を示すことで、価値提供を目指したい。

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大企業に勤務する3つの価値
自分自身が複数の大企業で働いた経験から、大企業で働くメリットについて取り上げたい。
まずは高い給与と厚い福利厚生である。よく「会社は頑張ってるのに従業員に給与を支払ってくれない。経営者が守銭奴でケチだからだ」という意見がある。
確かにそうした企業が存在する事実は否定しないが、労働人口が減少し、どこの企業も「人手不足による採用難」が経営リスクになっている今、そんな悠長なことをしている余裕はない。
高給を支払えない理由はシンプルに2つだ。1つ目は社会保険料が高すぎて、従業員の手取りに大きく影響すること。そしてもう1つは給与を払う原資がない、つまり無い袖は振れないからだ。
その点、大企業は稼ぎがあるからこそ大企業なのであり、同じ仕事でも年収は100万円、200万円違う事はザラにある。福利厚生もしっかりしており、育児休暇や家賃補助など、給与以外の経済的メリットは数多くある。
また、社会的信用はピカイチだ。これは住宅ローン審査も通りやすいというだけでなく、次の転職先でも名の通った企業に勤務していたというだけで錯覚資産になる。「錯覚」といっても転職が有利になればそれは現実のリターンになる。仕事以外でもこうした社会的信用は結婚相手からの評価にも影響する。