減反政策がすでに破綻していることは明らかだ。というより、少なくとも私の地域では減反政策などやっていない。むしろ、休耕地や耕作放棄地が目立つ。米作は普通にやっていると儲からない。兼業農家の多くは本業で稼いで、農地は意欲ある人に貸している——しかも無料で。
このコメ不足の時代だが、耕作放棄地は借りたくても貸してもらえないという事情がある。耕作放棄地の多くは、その所有者が都会に出て行っており、所在がよくわからない。仮に分かったとしても貸し借りの契約が成立し難い。
銘柄米の代表はコシヒカリだが、このコメは暑さ寒さに弱い。うちの田舎は、昨年に比べればこの5月は例年になく低温で、田植えが終わった周辺の稲苗の生育はあまり良くない。多くはJAから仕入れた苗で、農薬・肥料ががっつり入っている。温室育ちで自然の寒冷・酷暑に弱い。
今年の夏も酷暑が予想されるが、コシヒカリは暑さに弱く、身を守るために籾殻が厚くなる。そうすると必然的に米粒は小さくなり、収穫量が落ちる。このようなコメが結構な割合で自主流通しているので、全国的なコメの生産・流通量の実質減はなかなか把握しにくい。
うちの集落には50町ほどの田んぼがある(1町は10反。100m×100mで野球のグラウンド程)。そのうち収穫したコメをJAに収めているのは約半分。残りは有機農法や無農薬・無肥料の米であり、その多くは個人ルートで販売店や消費者のもとに届いている。そのような生産者は、この米騒動のご時世に「米作りがようやくなんとか儲かる時代になった」と言っている。
しかし、中長期的に見て儲かる状態が本当に続くのかはよくわからない。
上記のような背景を踏まえると、何が実のある農政改革なのか道筋を立てるのは至難だ。
少なくともJA全農をターゲットにするような農政改革に実はない。
郵政民営化の弊害の二の舞になることだけは避けなければならない———それが責任ある政治の在り方である。