北岡伸一氏と加藤さんは、どちらも1948年4月の生まれで、学園紛争さなかの東大で学んだ(北岡氏は当時から保守派で、学部も違ったが)。ふたりに面識があったのか、ぼくは知らないけど、もし互いに意識するところがあったなら、ちょっと素敵な話だと思う。
別の記事でも紹介したが、2015年の安倍談話に関わった北岡氏は、国際社会に通用するロジックで書くことを、最も重視したといま回顧している。
世界の、日本の歴史認識についての見方に対し「いやいや、日本はこう思ってるんだ。そんなこと〔=A級戦犯の賛美〕は思っていない」とはっきり出すことは大事だと思った。 (中 略) ──談話には国際社会に向けたメッセージという意味合いもあったのか?
むしろ、それが主だ。もう1つが国民に向けてのメッセージ。 国際社会、アメリカ向けのメッセージだったと考えている。
2025年1月の日本テレビより 1頁および5頁
一方の加藤さんは、生前最後の単行本になった『9条入門』で、「護憲版の ”普通の国” 論」を提起していたように思える。保守とリベラルとで団塊の世代を象徴する二人の知性は、生涯をかけてすれ違ったのだろうか。
同書もまた、別の記事で先日紹介した。9条に基づく戦後の平和主義を、賛否両派ともに「日本に特殊なもの」として語りがちだけど、それはどこまでホントなのか? を加藤は腑分けしてゆく。