彼らふたりに比べると、ジョージ・W・ブッシュ(子ブッシュ)は、箸にも棒にもかからないドラ息子だったことが見え透くような前歴の持ち主です。

どうにもまっとうな仕事に就けそうもないから、父親が自分の顧問に雇って給料を払ってやることにしたら、その父親が大統領だったために、メジャーリーグの野球チームの共同オーナーになれるほど裏金が入ってきたというのが、社会人第1歩という人生を送った人です。

また、大統領になってからの演説などを聴いていても、さすがに2音節、3音節の単語はひんぱんに綴りを間違えるトランプほど無学ではないけれども、きちんと主語・述語・修飾節が揃った文章になっていない発言があまりにも多い人でした。

それでも、企業CEOとして活躍した経験がなかったことが幸いして、無事2期を務め上げたのです。それぐらい、政治は妥協の産物にしかならないことを知っている人間は、独断専行が習い性となっている企業CEO経験者に比べて有利なのです。

トランプの独断専行は確信犯

ここで、第二次世界大戦後の大統領・重要閣僚の前歴の最後のページに移りましょう。

ジョー・バイデンの場合、2024年の大統領選に民主党公認候補として出馬したものの、途中で副大統領候補だったカマラ・ハリスに大統領候補の資格を譲っていたので、2期目の大統領選本選に挑戦して果たせなかったというわけではありません。

やはり、1期目を自力で勝ち取りながら継続して2期目を務めることができず、1期あいだを置いて2期目の大統領の座を獲得したトランプの異例さが際立っています。

トランプの場合、父親から引き継いだ小さな不動産会社を全米に名の通った企業に育てたという成功体験の持ち主ですから、それほど大きな成功体験を持たないカーターや父ブッシュに比べても、ずっと大きなハンデをしょって第1期の大統領職に取り組んだわけです。

1期目のトランプは、この企業CEOとしての輝かしい経歴というハンデをしょった人間としては、独断専行型人間の危うさをあまり表に出さず、比較的無難にこなしていました。