こんにちは。
アメリカの政界には一種のジンクスがあります。「企業CEOとか金融業界出身者は一見経済運営がうまくできそうだけれども、こうした前歴のある人が大統領や重要閣僚になると、必ず経済で失敗する」と言われています。
そして、この現象はたんなる偶然や、運悪くだれがやっても失敗しそうな時期に貧乏くじを引かされたということではなく、論理的に考えれば当然の結果と言うべきなのです。
そこで今日は「なぜ企業CEOと金融業界出身者は大統領や重要閣僚に向かないのか」という疑問に正面から取り組みたいと思います。
まず、企業CEOの適性問題から、考察していきましょう。
お忘れの方や初めからご存じない方が多いのですが、企業は自由競争の市場経済の世界ではありません。典型的な統制経済の世界です。
企業経営者は自社の内外に向かって「これこれの仕事をだれがいくらで引き受けてくれますか?」と市場でセリにかけて、出来高に応じて賃金・給与を払うわけではありません。かなり小さな企業でも、やるべき仕事は多種多様です。
その多種多様な仕事を一々セリで落札した人に請け負ってもらっていたのでは、取引コストがかかり過ぎます。だから企業は、特定の人の労働時間をまとめ買いしておいて、勤務時間中はその人の労働力を自由に使いたいように使うという契約になっています。
そこでの企業CEOは、統制経済を仕切る独裁者です。確保済みの労働力は法律を侵したり社会秩序を乱したりしなければ、どう使おうと自由、ただしその結果として出てきた経営成績には全責任を負うことになっています。
もし、確保済みの労働力をどう使うかについて、社員全員、管理職全員、あるいは重役全員で合意が形成できるまでとことん話し合って決めていたら、おそらく同業他社に比べて決断が遅くなりすぎて、いつもパッとしない業績しか出せない会社になってしまうでしょう。