第2次トランプ政権が最も力を入れている経済政策は、貿易相手国に懲罰的なほど高率の関税を課して、関税収入も大幅増収になり、海外に出ていった生産拠点も戻ってくるという白昼夢のような貿易戦争政策です。

この政策は次の世論調査結果でおわかりのように、アメリカ国民からはかなり嫌われていますが、おそらくトランプもベッセントもほとんど気にしていないでしょう。

多分「経済なんてどうとでも理屈はこねられる。まっとうな意見で支持者が多ければ、当たったときの配当は少ない。すっ頓狂な意見なら、当たれば配当は大きい。外れたら、もっともらしい言い訳を考えるより、次から次にすっ頓狂な政策をひねり出していけばいい」とでも考えているのでしょう。

ベッセント財務長官ほど枢要な地位にいる人ではありませんが、この方のご尊顔はどうしても読者のみなさんにご紹介したくなるほど立派なご面相をお持ちなのが、社会保障庁長官のフランク・ビシニャーノ氏です。

選挙運動中のトランプ陣営は「反戦平和」とともに「緊縮財政」も掲げていました。たしかに、この社会保障庁長官なら退職者、障害を持つ人、寡婦・孤児のための年金などにばっさり大ナタを振るいそうです。

しかし、それなら連邦政府予算全体がほんとうに削減できるのかというと、イスラエルに金額欄ブランクの小切手を送りつづけているぐらいですから、国防費の増加が凄まじくてとうてい予算規模は縮小できそうもありません。

一方、国際プログラムへの出資はほぼ皆減で、住宅都市開発省も、保健福祉省も、予算が大幅に削減されました。教育省は予算規模はあまり大きく減っていませんが、省そのものがトランプ大統領の行政命令ひとつで解体されることになり、連邦地裁での係争案件となっています。

トランプは「チップはもらうほうもあげるほうも非課税にしたから、貧しい人たちに優しい予算だ」と言っていますが、ワートン・ビジネススクールの「予算モデル」の試算では、やっぱり上に厚く下に薄い所得移転になりそうです。