その結果、上の図のような人間関係を模したネットワークが形成されました。

既存の研究は完成したネットワークを数学的に分析することで、ネットワーク内で「敵の敵は味方」理論が成り立っているかどうかが検証されてきました。

しかし驚くべきことに誰もが知っているはずの「敵の敵は味方」理論を数学的に証明しようとする努力はすべて失敗に終わっており、ネットワークのある部分では成り立つものの別の部分では成り立たないなど、一貫性のない結果が得られるだけでした。

そこで今回ノースウェスタン大学の研究者たちは、2つの現実的な事実をネットワークに組み込むことにしました。

現実世界ではポジティブな人もおり、敵味方の符号のつけやすさが異なります。
現実世界ではポジティブな人もおり、敵味方の符号のつけやすさが異なります。 / Credit:clip studio . 川勝康弘

1つは「他人よりポジティブな人がおり容易には敵認定しないことがある」という点です。

たとえばあなたの友人に敵対をしている人がいたとすると、従来の理論ならば「味方の敵は敵」となり、あなたはその人に対しても敵対的でなければなりません。

実際に友人を攻撃する人を即座に敵と認識する理論通りに動く人もいるでしょう。

しかし「あなた」にあたる人物が寛容である場合、友人を攻撃している人に対して敵対関係が結ばれなかったり、場合によっては味方関係になってしまうこともあります。

これを数学的に言えば「人(ノード)の間にある関係性のライン(エッジ)に敵味方の符号付けをする方法は画一的ではなく、人(ノード)ごとに多様性がある」となります。

味方が敵だと言っても、敵についての情報が全くなければ敵対しようがありません
味方が敵だと言っても、敵についての情報が全くなければ敵対しようがありません / Credit:clip studio . 川勝康弘

もう1つは「現実世界では誰もがお互いを知っているわけではない」という点です。

多数の味方がいる人に個人的に敵認定された場合、理論通りならば、即座に多くの人から敵認定を受けることになってしまいます。