これらの発見の重要なことは、おばあちゃんのサポートをうけた娘や息子は生存率や繁殖成功率が向上するということです。これは、娘や息子にとって、おばあちゃんのサポートが絶大な効果を発揮するものであることを意味します。
一方、おばあちゃんは娘や孫をサポートすることで、自分で仔を残さずとも、自分と血のつながったものが子孫を残せる可能性を高めることができます。つまり、おばあちゃんは家族をサポートすることによって、自分の間接的な子孫(遺伝子の一部を共有している)を増やすという恩恵を受け取ることができます。
長寿化によって、娘/息子や孫たちをサポートできる期間が長くなれば、おばあちゃんにとっても、その子孫にとっても利益があるため、おばあちゃんは進化しうると考えることができます。
今回、エリス氏たちは、この仮説がハクジラ18種を対象とした比較によって支持されることを明らかとしました。

一見すると、上の説明にておばあちゃんの存在を説明できそうですが、しかしこの説明でも、おばあちゃんは別に自分で仔を産んでもいいように思えます。
なぜおばあちゃんは自分では仔を産まないのでしょうか?
有力な仮説は、「おばあちゃんが、娘と繁殖の時期を被せないことで、娘との競合を避けている」というというものです。
仔を育てることは重労働であるため、餌などの資源がたくさん必要になります。
もし、おばあちゃんと娘の繁殖の時期が重なってしまうと、家族内で資源をめぐる競合が起こってしまいます。
これでは、おばあちゃんにとっても、娘にとってもマイナスに働きます。
「寿命のうち繁殖のできない期間のみが長いこと」は、おばあちゃんは娘との競合を避けつつ、娘や孫たちをサポートできることを示唆します。
