ただ、こうした客観と主観の結果の差は、睡眠研究では非常によく報告される現象であり、研究者は主観的な睡眠の結果には性的活動との有意な関連が見られなかったが、中途覚醒時間(WASO)と睡眠効率(SE)という客観的な指標においては、性的活動後に小さいながらも有意な改善が見られたという点を重要視しています。
しかし、これまでも性的活動後の方がよく眠れるというような印象は語られていました。
この点については、主に記憶を頼りに思い返したとき、ポジティブな印象が残りやすいためではないかと考えられます。
今回の研究では、性的活動の翌朝の「気分」や「やる気」についても、主観的な評価が調査されていますが、これは性的活動をしなかった場合に比べて、性的活動を行ってから寝た場合の方が明らかに高くなっていました。
特にこの傾向はパートナーとの性行為でオーガズムを得た場合には、その効果が最も顕著に確認されました。
マスターベーションでも同様の効果は認められた。ただ効果の大きさは性交よりも明らかに小さいものだったという。
この影響がソロより性交で大きかったというのは、就寝前の性的活動は単なる性的快楽だけでなく、人とのつながりや身体的接触が心身に及ぼす影響の大きさを改めて示唆する結果といえるでしょう。
確かに効果はある寝る前の性的活動
今回の研究は、性的活動が睡眠に与える影響を、主観的な実感だけでなく、客観的な測定からも検証した珍しい報告です。
結果として、性交やマスターベーションによって中途覚醒が減少し、睡眠効率がわずかに改善されることが明らかとなりました。
性的活動が毎晩の睡眠を劇的に変える“万能薬”というわけではありませんが、心身の回復や気分の整え方のひとつとして、科学的に根拠のある選択肢になり得ることが、今回の研究で静かに証明されつつあります。
研究から示されたのは僅かな差ではありますが、もしあなたが「最近、なんだかよく眠れない」と感じているなら、就寝前の習慣として取り入れることは1つの選択肢になるかもしれません。