比較対象の明確化

VAT導入以前: 輸出製品の価格には、多段階課税によって累積した国内税負担が埋め込まれていた。その負担を正確に排除することが困難だった。

VAT導入後: 輸出製品の価格からは、国内のVAT負担が完全に排除される(仕入VATは還付されるため)。

つまり、VAT導入による輸出振興効果は、「以前の税制では輸出品に国内税負担が乗ってしまっていた状態」から、「VATでは輸出品から国内税負担を完全に排除できる状態」へと変化したことによって生まれるのです。

VAT導入以前は「付加価値税」という名前の税金はゼロでしたが、製品価格には他の国内税が埋め込まれており、輸出業者にとってはそれが実質的な負担(海外での価格競争力低下という形での不利益)となっていました。

VAT導入後は、仕入時に一旦VATを支払いますが、それが還付されるため、輸出品に国内税負担が乗ることはなくなり、以前の税制下での実質的な不利益が解消された、ということです。

比較対象は「付加価値税がない状態の負担ゼロ」と「付加価値税があり還付されて負担ゼロ」ではなく、「他の国内税が輸出品に埋め込まれていた状態」と「VATが輸出品から完全に排除される状態」の間の、輸出品の価格に乗る国内税負担の差です。

この差こそが、輸出業者にとってのメリットとなり、輸出振興につながったと考えられます。

比較対象がおかしい話が都合よく解釈されている

国の施策や企業の意思決定の損得については、「その意思決定をした時としなかった時のトータルの資金負担を比較すべき」であり、その場合には、比較対象以外の前提条件をきちんと揃えることが必要です。

そこで、念押しとして、「要するに、フランスでは、これまでの売上税による不合理があったものを、付加価値税により解消されたことで、輸出事業者に恩恵があったというだけでは?

つまり、売上税と付加価値税の比較であり、税金が0のところから、付加価値税が導入されることで、輸出企業に恩恵があるわけではないはず。