しかし、比較すべきは「付加価値税という税金があるかないか」ではなく、「輸出される製品が、国内の税負担をどれだけ含んでしまうか」という点です。
VATが導入される以前、フランスを含む多くの国では、売上高税(Turnover Tax)のような多段階で課税される税金が広く採用されていました。この税金が輸出業者にとって不利に働いていたのです。
VAT導入以前(売上高税などの多段階課税)の問題点
多段階での課税: 製品の製造・流通プロセス(原材料生産者→部品メーカー→組立メーカー→卸売業者→小売業者など)の各段階で、その段階での売上高に対して税金が課されました。
税の累積(カスケード効果): 各段階で課された税金は、次の段階の事業者のコストとなり、そのコストにさらに税金が上乗せされていきました。前の段階で支払った税金が、次の段階で控除される仕組みがありませんでした。これを「税の累積」や「カスケード効果(滝効果)」と呼びます。
輸出品からの税の排除が困難: このように各段階で累積して製品価格に「埋め込まれて」しまった税金は、最終製品を輸出する際に、その税額分だけを正確に計算し、価格から差し引くことが非常に困難でした。税金が価格の中に溶け込んでしまっていたのです。
結果として、VAT導入以前は、国内市場向けの製品と同様に、輸出される製品にも、製造・流通の各段階で累積した国内税負担が乗ったままの価格になりがちでした。
これは、国内税負担が全くかからない他国からの輸入品や、VATのような仕組みで国内税を完全に排除できる他国の輸出品と比べて、価格競争力で不利になっていたのです。
VAT導入後(仕向地主義とゼロ税率、還付)の効果
前述の通り、VATの仕組み、特に仕向地主義では、輸出はゼロ税率となり、さらに原材料などの仕入れにかかったVAT(仕入税額)は還付されます。
これにより、輸出される製品の価格から、国内で発生したVAT負担が完全にゼロになります。