実際、場所によっては過去10年で夜空の明るさが2倍以上に増えたことがわかっています。
そこで今回の研究では19の異なる農場が調べられ、それぞれの農地の近くにある都市の灯との関連性も調べられました。
もし都市の明かりによって「光の競争」が起きている場合、明るい都市の周辺にある農場ほど設置されたライトトラップの効力が落ちるはずです。

しかし分析を行ったところ、周辺の都市の明るさ(光害)のレベルと、農場のライトトラップで捕獲される蛾の数に相関性がないことが判明します。
そのため夜が全体的に明るくなったため、虫が光にそれほど引き寄せられなくなったという考え方は否定されます。
また、過去に行われた別の種類の蛾を焦点にあてた実験では、明るい都市部の蛾は田舎の蛾に比べて、ライトトラップに引き寄せられなくなっていることが報告されています。
これは幅広い種の蛾において、光に囚われる機会が多いほど、光に向かう性質が減っていることを示唆しています。
虫たちが人工光に捕らわれた経験を学習して回避するようになった可能性もありますが、虫たちの一生は短く学習できる機会や生き残って学習を生かす機会も限られています。
そのため研究者たちは、ライトトラップで捕らえられる蛾が減ったのは、人工光に引き寄せられないように蛾たちが進化したと考えるほうが妥当であると結論しています。
人間にとって数十年という期間は一生の一部に過ぎません。
しかし年間3~7回もの世代交代を行う虫たちにとっての数十年は、人工光を避けるように進化するのに十分な期間であると考えられます。
実際、以前に行われた別の研究では、強力な選択圧がかかると虫たちは飛行能力や夜間活動の割合、感覚能力などさまざまな機能を急速に進化させることが実証されています。
今後、人類がより人工光を多用すればするほど、虫たちの進化が加速し、ライトトラップは昆虫の捕獲方法としてほとんど機能しなくなる可能性があります。