記録を開始した当初、フェロモントラップで捕獲した蛾の総数を100%とすると、ライトトラップで捕獲できる総数は約30%でした。

しかし年月が経過すると、フェロモントラップで捕獲できる数は一定なままであったものの、ライトトラップで捕獲できる数だけが急速に減少していきました。

そして近年ではフェロモントラップで捕獲した数のわずか4.6%のみしか、ライトトラップでは捕らえられなくなっていることが判明します。

この結果は、蛾の総数は変らないのに、ライトトラップで捕らえられる蛾の数だけが急減していることを示しています。

同様の結果は他州の農場でもみられており、この現象が局所的なものではなく大陸規模あるいは世界規模で起きている可能性を示しています。

いったいなぜ蛾たちは、光に捕らわれなくなってしまったのでしょうか?

虫は光に捕らわれないように進化している可能性がある

なぜ虫たちは調査で使われるライトトラップに捕らわれなくなっているのか?

研究者たちは第1の要因として「昆虫が光に捕らわれないように進化した」ことをあげています。

光に引かれる昆虫は、捕食者に捕まりやすくなることで怪我をしたり、疲労が蓄積したり、重要な食料源を利用できなくなるなど、生存にとって不利な結果を招きます。

さらに、生き残っても分散や採餌、交尾、産卵といった生命活動の機会を逃すことが多いのです。

そのため人工の光に強く引き付けられる性質をもつ個体は、集団の遺伝子プールから抜け落ちていき、徐々にライトトラップに捕らえられない性質を持つ個体が、より多くの子孫を残したと考えられます。

人工光が増えたことが自然淘汰を加速したのかもしれない
人工光が増えたことが自然淘汰を加速したのかもしれない / Credit:NASA

一方、これまでの研究により、人工の光が増加したことが、ライトトラップで捕らえられる虫の数を減らしたという報告がなされています。

これは「光の競争」と呼ばれており、都市の明かりが強いためライトトラップの光の効力が相対的に低下したとする考えです。