ところが、2025年になると、日中帯に限ってはフランスとの連系線における電力の流れが逆転し、スペインからフランスへの送電が行われるようになっています。この送電の主な電源は、スペイン南西部に多く分布している太陽光発電(PV)です。
この状況から想定されるのは、2025年頃の日中帯には、スペイン南西部からマドリードを経由してフランス方向へと電力が大量に流れる構造になっていた、ということです(図6)。実際に4月28日に広域停電が発生したのは、PVの出力が最大となる12時台であり、この時間帯の電力の流れと何らかの関係があった可能性が考えられます。

図6 2025年以後のスペイン国内日中帯の電力の流れ(筆者の想定)
図6に示したように、太陽光発電の多いスペイン南西部から、マドリードやバレンシア方面へ向かう電力の流れが強まっていることが想定されます。電力の流れが特に大きいと考えられるルートには、太く、ピンク色の矢印を用いて強調しています。
さらにこの図には、冒頭でアーゲセン環境移行大臣が説明した、停電が最初に発生したとされる「グラナダ」「バダホス」「セビリア」の3地点も重ねて表示しています。これにより、電力の流れの集中と事故発生地点との位置関係が視覚的に把握でき、系統負荷との関連性を考察するうえで重要な手がかりとなります。

図7 停電がはじまったとされる3変電所の場所を×印で記入
単発事故が広域停電に至った要因
図中に記号が多くなり、やや見づらくなってしまい申し訳ありませんが、停電が始まったとされる3つの変電所(グラナダ、バダホス、セビリア)は、いずれもピンク色の矢印――すなわち電力の流れが大きいと想定されるルート――の根元付近に位置しています。これは偶然ではないと考えています。
もちろん、単に電力の流れが多いからといって、それだけで停電が起きるわけではありません。ここで注目したいのは、アーゲセン環境移行大臣の説明に含まれていた「原因が特定されていない3件の事故によって、2.2GWの発電力が失われた」という点です。原因が特定できていないとはいえ、事故の概要くらいは説明があってしかるべきですが、その説明すらありませんでした。