これに対し、図3に示す2025年4月のデータでは、電力の流れに大きな変化が見られます。とくに太陽光発電(PV)が高稼働となる日中の時間帯には、電力がスペインからフランスへと逆流している状況が確認されます。このような変化が系統に与える影響については、後ほど詳しく説明します。

図3 スペインとフランスの間の送電電力グラフ2025年4月Energy-chartから
3つ目のデータは、図4に示したスペイン国内の太陽光発電(PV)の分布図です。これを見ると、日照時間の長い地中海沿岸、特にスペイン南西部に多くのPV設備が集中していることがわかります。この傾向は、日本において九州地方に太陽光発電が多く導入されている理由と類似しており、いずれも日射量の多い地域に設置が偏っていることを示しています。

図4 スペイン国内のPVの分布
電力流動の変化と中核都市への影響
これらの情報をもとに、スペイン国内における電力の流れを想定してみました。スペインの三大都市は「マドリード」「バルセロナ」「バレンシア」であり、日本と同様に、電力は基本的に大消費地へ向かって流れる傾向があります。
図5は私の想定図ですが、2019年以前は太陽光発電(PV)の出力がまだ小さく、スペインはフランスから電力を定常的に輸入していました。そのため、国内の電力の流れとしては、例えばフランスからの電力が北東側から、南西部の火力や水力などの電源が反対側から、それぞれマドリードなどの中核都市に向かって流れ込む――すなわち東西からバランスよく収束するような形になっていたと考えられます。このような電力分布は、系統の安定性という観点からも、理想的な形態の一つといえるでしょう。

図5 2019年以前のスペイン国内の電力の流れ(筆者の想定)