届く保証のない、悠久の旅路へ
ボイジャー1号と2号は、特定の星を目指しているわけではない。惑星探査の過程で、木星などの巨大な重力を利用して加速する「スイングバイ」という方法で軌道が決定され、現在はそれぞれ異なる方向へと、ただひたすらに太陽系を離れ続けている。ボイジャー1号が、比較的近くにあるとされる恒星「グリーゼ445」の近傍を通過するまでには、実に4万年以上もの歳月が必要だという。
その頃にも、ボイジャーに取り付けられたゴールデンレコードは、星間空間の極低温と真空状態のおかげで、ほとんど劣化することなく存在し続けていると予想されている。金メッキされた銅製のレコードは、10億年以上もその情報を保ち続けられるように設計されているのだ。
しかし、このレコードには自ら信号を発信する機能はない。発見されるかどうかは、ひとえに、遠い未来、どこかの宇宙で高度な文明を持つ何者かが、偶然この小さな探査機を見つけ出し、その表面に刻まれたメッセージに気づき、そして解読してくれるかどうかにかかっている。

このゴールデンレコードは、1970年代という、ある特定の時代の地球の姿を映し出している。デジタルデータが主流となる以前のアナログ記録であり、インターネットもAIも、気候変動問題もまだ一般的ではなかった時代の、科学と未来への楽観に満ちた眼差しがそこにはある。
チームメンバーの一人であるアン・ドルーヤン氏の脳波を1時間記録し、音声データとして変換したものまで収録されているというから驚きだ。彼女はその際、地球生命の歴史や人間関係、そしてカール・セーガンへの想いを頭に巡らせていたという。
もし今日、同様のプロジェクトを立ち上げるとしたら、そのプロセスも内容も大きく異なるだろう。より多くの専門家が関わり、世界中から意見を募り、デジタル技術を駆使した膨大な情報が盛り込まれるかもしれない。しかし、このボイジャーのゴールデンレコードは、限られた時間と資源の中で、少数の人間が「地球を代表する」と信じたものを、真摯に、そして未来への希望を込めて選び抜いた、かけがえのない「タイムカプセル」なのである。
現在、ボイジャー1号は地球から240億キロメートル以上も離れた宇宙空間を飛行中だ。一部の観測機器は機能停止しているものの、地球からのコマンドにはまだ応答しているという。ボイジャー2号も、少し遅れて別の軌道を辿っている。二つの探査機は、それぞれ同じ内容のゴールデンレコードを積んで、静かに未知の空間へと進み続けている。このメッセージがいつか誰かに届くのか、それは誰にも分からない。しかし、私たちのささやかな、そして壮大な願いを乗せた金の円盤は、今日も宇宙を旅しているのだ。
提供元・TOCANA
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