太陽系の遥か彼方、冷たい宇宙空間を一枚の金属製の円盤が静かに漂っている。1970年代に打ち上げられた探査機ボイジャーに取り付けられた、通称「ボイジャーのゴールデンレコード」。この円盤は、信号を発するでもなく、誰かに呼びかけるでもなく、ただひたすらに宇宙の深淵へと進み続けている。しかし、そこには私たち地球からのメッセージが込められているのだ。もし、いつか他の知的生命体がこれを発見したなら、彼らが手にするのは、約50年前に一握りの科学者たちが下した決断の結晶なのである。
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ミッションの片隅で生まれた壮大なメッセージ
ボイジャー探査機は、もともと太陽系の外惑星を探査し、その後は地球に戻ることなく宇宙空間を旅し続ける運命にあった。そんなミッションの最中、1976年、著名な天文学者カール・セーガンが、探査機に「地球からのメッセージ」を搭載することを提案した。NASAはこのロマンあふれるアイデアを承認し、セーガン氏にその制作チームのリーダーを任せた。
与えられた時間はわずか6ヶ月弱。セーガン氏は、フランク・ドレイク氏や、後に妻となるアン・ドルーヤン氏ら少数の精鋭を集め、地球の音、音楽、画像、そして様々な言語での挨拶を詰め込んだ「視聴覚記録」の制作に乗り出した。こうして誕生したのが、銅製で金メッキが施されたレコード盤だ。レコードはアルミニウム製のカバーで保護され、探査機の外側に取り付けられた。カバーには、中性水素の特定の波長や、14個のパルサー(周期的に電磁波を出す天体)の位置といった、宇宙共通の物理法則や数学的知識があれば解読できるような形で再生方法が記されている。これは、万が一にもレコードが発見された際に、どんな知的生命体にも理解してもらえるようにという願いが込められていた。

(画像=画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)