意図的に省かれたもの、そして託された願い

 興味深いのは、このレコードに何を含め「なかった」かという点だ。制作チームは、限られた時間と当時の技術的制約の中で、戦争や兵器、特定の宗教儀式や政治的思想といった、対立や論争を生む可能性のある要素を意図的に排除した。代わりに、科学の成果、自然界の美しさ、そして文化の多様性に光を当てた。

 これは地球文明の完全な歴史書を目指したものではなく、あくまで1970年代というある一時期の、平和的で協力的な人類の姿を切り取ったスナップショットなのだ。もちろん、人類が決して平和なだけの種族ではないことは承知の上で、それでも未来への希望を託したのだろう。

 レコードには、14個のパルサーを基準点として太陽系の位置を示す「宇宙の地図」も刻まれている。地球そのものの名前は記されていないが、高度な文明を持つ存在ならば、この情報から私たちの太陽系の場所を特定できるかもしれない。このように、言語ではなく、宇宙共通の言語である「物理法則」を介してコミュニケーションを図ろうとした点も、このプロジェクトの独創性を示している。