2. ダマスカス鋼(ウーツ鋼):伝説の切れ味と強靭さを誇る金属

(画像=出典:Wikimedia Commons(GFDL),『TOCANA』より 引用)
紀元前3世紀の南インドで生まれたとされるウーツ鋼は、その後の鍛造技術によって伝説的なダマスカス刀へと姿を変えました。ダマスカス刀は、剃刀のような鋭い切れ味と、衝撃に対する並外れた強靭さを併せ持つことで知られています。
近年の電子顕微鏡などを用いた分析により、ウーツ鋼の内部には、バナジウムやモリブデンを豊富に含む炭化物のナノ粒子ネットワークが存在し、これが亀裂の進展を妨げていることが明らかになりました。また、鍛造時の周期的な熱処理と繰り返される折り畳みによって、硬いセメンタイト層と比較的柔らかいフェライト層が交互に重なる独特の縞模様の微細構造が形成され、これがダマスカス鋼特有の性質を生み出していたのです。現代の金属学者は、粉末冶金やレーザー積層造形といった最新技術を駆使し、この古代の製法を再現しようと試みています。