うつ・不安のスコアや睡眠の質がいずれも悪化し、6か月後には症状を持つパートナー(DA表現型)に近づいていたのです。
特に唾液コルチゾールの変動が顕著で、健康だった配偶者の平均コルチゾール値は10.4 ng/mLから17.5 ng/mLへと有意に増加しました。
一方、DA表現型の配偶者はもともと39 ng/mLほどと高く、6か月後にも39 ng/mL前後で統計的に有意な変化は見られませんでした。
さらに注目すべきは口腔内の細菌構成です。
健康群の口腔細菌叢が大きく変化し、パートナー(DA表現型)の口腔内環境に似通っていきました。
言い換えれば、半年間の共同生活を通じて夫婦のお口の微生物コミュニティが“クローン化”のように近づいた形です。
実際、片方がDA表現型であるカップルでは、もともと健康だった配偶者の口内フローラがパートナーのフローラを鏡のように反映する現象が確認されました。
この細菌叢の変化はストレスホルモンである唾液コルチゾールの動きや抑うつ・不安のスコア悪化と明確に連動し、統計的にも有意な相関を示しています。
メインの結果としては、DA表現型の口腔内においてクロストリジア類(Clostridia)、ベイヨネラ属(Veillonella)、バチルス属(Bacillus)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)といった菌が健康群より顕著に多く検出されました。
そして重要なのは、こうした菌がパートナーの健康だった口の中にも増えていたことです。
一方で、不眠の重症度との相関解析では、フソバクテリア(Fusobacteria)など別の菌群も関連が示唆され、総じて口腔内細菌の多様な変化が見られました。
これらの細菌は脳機能や免疫系への影響が指摘されていますが、論文では「blood–brain barrier(血液脳関門)を直接損なう可能性」など、あくまでも仮説ベースであり、確定的に断言する段階ではありません。