(※これはフランスの場合(平均7時間52分、理想8時間52分)と国が違うだけで大きく異なります。)

実際、本調査では参加者たち自身も「理想的には現在よりもう少し長く眠りたい(眠るべき)」と感じている傾向があり、多くの国で慢性的な睡眠不足が生じている実態もうかがえました。

もう一つの重要な発見は、自分が属する文化圏で「適切」とされる睡眠時間に近いほど健康状態が良好になるという傾向です。

わかりやすく言えば、「○○国では大人はだいたい◯時間くらい寝るのが望ましい」といった社会通念に対し、自分の実際の睡眠時間がその理想に近い人ほど、持病の少なさや精神的な安定度など健康面の指標が高かったのです。

例えば、日本の文化圏で「大人は7時間睡眠が理想」という認識を持つ人であれば、自身もほぼ7時間眠れている場合に健康状態が良い傾向が見られました。

反対に周囲の理想とかけ離れた短眠・長眠の人は健康度が低めでした。

この結果は、睡眠においても各文化に根付いた習慣や規範に沿った生活を送ることが健康に寄与しうることを示唆しています。

“8時間の呪縛”を解け:睡眠ガイドラインはローカルメイドへ

“8時間の呪縛”を解け:睡眠ガイドラインはローカルメイドへ
“8時間の呪縛”を解け:睡眠ガイドラインはローカルメイドへ / Credit:clip studio . 川勝康弘

以上の結果から明らかになったのは、「1日8時間眠るのが万人にとって最善」という画一的な常識にとらわれず、文化ごとの状況に合わせて睡眠を考える必要性です。

研究チームのクリスティン・ウー氏は「理想の睡眠時間は、その人が属する文化圏で『適切』だとみなされる睡眠時間と一致する」と指摘しています。

つまり、文化的に共有された「これくらい寝るのが普通」という基準と自分自身の睡眠パターンが合致しているほど、心身の調子も良くなるのかもしれません。

なぜ文化と健康がこのように結びつくのでしょうか?

研究者たちは「日本人がフランス人よりも90分ほど平均睡眠時間が短いのに健康でいられるのは、深い眠りやREM睡眠などのステージの振り分け方が異なる可能性がある」という仮説を示唆しています。